国定図書館の暗殺者 (ページ14)

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一件落着とはの時間　（“先生”編）ページ14

「お前の目も曇ったなぁ、烏間」

　息を切らせてグラウンドに出ると、渚くんと鷹岡が対峙していた。渚くんの口には何故か本物のナイフ。如何見ても異常な状況だ。誰も、止めない。なんで。私は烏間先生の方を見た。

　「……」

　静かに。静かに状況を見ている。
　私はその場にしゃがみ込んだ。いや、そんなはずは無い。烏間先生のことだ何が起こるかも。何をされるのかも。知っているはずだ。

　「如何して、渚くんを……！」

　突如、動いた。渚くんは笑顔で歩いている。通学路を歩く様に。見ている人を安心させる様な笑みだ。
　鷹岡の体にぽすんと渚くんが当たった。

　「わっ」

　鷹岡の首へとまっすぐにナイフを振る。驚いた鷹岡が体勢を崩した。あっけなく。くいっ。渚くんが鷹岡の服を引っ張った。どっ。鷹岡が転んだ。渚くんは隙を見付け背後に回る。そのまま蛇の様にナイフを。首元に。

　「捕まえた」

　全て一瞬の出来事だった。物凄い速さで渚くんは実行して見せたのだ。

　「そこまで！！」

　急に殺せんせーの声が響いた。放心状態の私はハッと顔を上げた。
　見ると、渚くんが持っていたナイフをポリポリ食べている。

　「怪我でもしたら如何するんですか。全く」

　渚くんがあんなに強いとは思わなかった……。凄いなぁ。それにしても

　「ねぇ、渚くん」
　「な、何。Aさん」
　「……ううん。何でもないよ」

　少し躊躇して首を振ると、前原君が肩に手を掛けてきた。

　「もしかして、惚れちまったのか？」
　「違いますぅ」
　「何か云いたいんだったら遠慮無く…」
　「ううん！いいの」

　私は笑顔でそう云った。だって、だって。申し訳なさ過ぎる。そんなに強いなら……

　「うちの呑兵衛どもの性格矯正に付き合って下さい！！」
　「急に叫んで如何したんですか？」
　「わぁっ！！」

　後ろを振り向くと理事長が立っていた。

　「解雇通知です」

　そう云って鷹岡に近づいた。華麗に片手でサインをして鷹岡の口に書類を突っ込む。

　「椚が丘学園の任命権はすべて私にあるということをお忘れ無く」

　冷徹な声でそう云うと、用は済んだとばかりにグラウンドから出て行った。
　その後を追う様に鷹岡も出て行った。

　「やったぁー！！！」

　烏間先生が先生に戻ると喜んでいる。私も喜びつつ、頭の片隅でこう考えた。

　(経営者は皆こうなのかな)

　ピロリン♪

　｛芥川寛は優しいからね！！｝

　「うん。知ってる」(完結)