98 山の獅子(3) ページ5
「もし先に出会っていたら私も一員だったかもしれませんね」
武風を頭領と仰ぎ、技を磨く日々。そして白雪の話だって聞いていたかもしれない。
ありえない未来だと笑い飛ばされるかと思ったのだが、思いの外真面目な顔を返された。
「それいいじゃん」
「悪くないな」
ぼそりと聞こえた言葉にギョッとする。
鹿月はともかくイトヤに好かれることをした覚えはないのだが。何故そんな乗り気なんだ。
助けを求めるように武風の方を見る。が、彼も腕組みをして考え込んでいた。
「親父よりは父さんの方が……って冗談だ」
Aの視線に気付くとカラリと笑い飛ばすように否定したが、胡乱げな視線を向けてしまう。
この人まで何を言ってるんだ。山の獅子流の冗談なのか。
「やっぱり白雪がいないと寂しかったんですね」
「いやまあ違うことはないんだが」
「何話してんですか。あんた達は」
呆れたような声が会話を打ち切る。
良い匂いを嗅ぎ取ったAは空腹を思い出す。
「あ、オビ」
「はいオビです。もう話は済みました？」
素直に扉から入ってきたオビは寝台のそばにある机に湯気が立つスープを置き、自らはAの隣に腰掛ける。
寝台が軋んだ音を立てたがそれよりAの意識はスープに向かっていた。
柔らかくて甘い匂いがする。ポタージュかな。
「お前さん、やっぱり顔が違うな」
顔を上げても武風とは目が合わない。
オビに話しかけているらしい。
「そうです？」
「まあそっちのが良い顔ってことだ。
邪魔して悪かったな。ほらお前ら行くぞ」
「はーい。じゃあAまた明日！」
鹿月は手を振りながら、イトヤは微かに頭を下げた後、武風の後を追って出て行く。
急に静かになった部屋に宴の笑い声が響いた。
「宴、まだやってるんだね」
「もう寝てる奴も多かったけどね。
はい。お待ちかねのお嬢さん特製滋養たっぷりポタージュ」
「わあいっぱいだ」
芋、人参、生姜、あと薬草が数種類。
並々とお椀に盛られたスープは多いように見えて、あっという間に飲み切ってしまった。
「美味しかったかい？」
「とっても。でもわざわざ持ってきてもらわなくてよかったのに」
「宮廷薬剤師さんから『まだ安静に』って言伝を預かってきたもので」
「それは守らなきゃなぁ。
でもオビはもどっていいよ。まだあんまり食べてないでしょう」
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七草(プロフ) - 紗夜さん» お返事くださっていたのにすみません！！全く気付いておりませんでした！己の睡眠欲に負けないよう頑張ります！ありがとうございます！！！ (2021年8月16日 10時) (
レス) id: 36eff566e0 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 続きを…続きをください！ (2021年6月26日 4時) (レス) id: 5c2d649dea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：七草 | 作成日時：2021年5月4日 20時
