123 帰城1 ページ30
色々あった雨宿りも終わらせ、雨上がりの道を馬で走る。
そうしてやっと辿り着いたのはしばらくぶりのウィスタル城。
カイとシイラに迎えられ馬を降りると、急に強く吹いた風が前髪を撫でた。
空に舞い上がった木の葉を目で追い、目に入ったのはあの日と変わらない王城。
降り注ぐ日差しの中、悠然とそびえ立つ姿に感慨にふけっているとゼンに声をかけられた。
「また目に焼き付けているのか？」
「そう。いっそ毎日間違い探しでもしようかなと」
分かっていて聞いているのだろう。揶揄うような表情に笑い返す。
出立の日はこんな風に話の種にするとは思いもしなかった。
「ゼン、早速抜けて悪いけどイザナ殿下のところに行ってくる。
なんだか首元が寂しくて仕方ないんだ」
「ああ、行ってこい」
＊
「執務室におられますよ」
出会った衛兵に教えてもらった情報を頼りに駆け込んでみたが。
「イザナ殿…下」
今更口を閉じても遅い。
確かめもせずに入った部屋の中にはザクラとハルカがいた。
前者は肩を揺らして、後者は呆れたような視線でこちらを見ている。
そうして部屋の奥で椅子の肘掛けに頬杖をつくイザナは予期していたように動じていない。
このまま無かったことにして引き返せないかな。
なんて思うが「どうした？」と問う声に退路を絶たれる。
「邪魔をしてしまい申し訳ありません。
帰還のご報告まで。」
「話があるんだろう」
なんとも無慈悲である。
3対の瞳に見つめられ、逃げ場はないと悟ったAはその場で片膝をついた。
「勝手をして申し訳ありませんでした。
身分証を返していただけないでしょうか」
「……良いだろう」
少し考えるような間の後、イザナは隣に控えるザクラに目を向けた。
目礼した彼からAの身分証を受け取ると、おもむろに立ち上がり。
自らAの元へと歩いてきた。
慌てて立ち上がろうとしたが目で制されてしまい、ただ見上げるだけ、となんとも間抜けな体制で待つしか出来なくなる。
カツリ、カツリと響き渡る靴音は意図的に大きく立てているのだろう。
滲み出る威圧感にAだけでなく他の2人も背筋をのばした。
カツ！と一際大きな靴音が響き、視界に影がさす。
深い深い青色がAを見下ろしていた。
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七草(プロフ) - 紗夜さん» お返事くださっていたのにすみません！！全く気付いておりませんでした！己の睡眠欲に負けないよう頑張ります！ありがとうございます！！！ (2021年8月16日 10時) (
レス) id: 36eff566e0 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 続きを…続きをください！ (2021年6月26日 4時) (レス) id: 5c2d649dea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：七草 | 作成日時：2021年5月4日 20時
