117 夜闇5 ページ24
聞こえた足音は複数の物だった。
だから護衛ももう少しいるだろうと思ったのだが予想外れだったらしい。
少しうろうろしても誰もおらず、辿り着いた部屋にもトロウと座り込んだ少年しかいなかった。
身なりが整っていることから察するに、おそらくこの人が探し人だろう。
あの足音はこの少年と護衛のものだけだったみたいだ。
「無事捕まえたんですね」
「まあね。そっちもお相手ありがとね」
「いえいえ。
ところで、なんでこの人遊び歩いてたんですか」
「遊び歩いてたわけじゃない!……けど反省してる。ちゃんと家に帰るよ」
睨むように凄んだのも一瞬。
トロウをちらりと見て俯いた彼は小さな声で呟く。
随分と絞られたらしい。
「帰れる家があるのは幸せなんですよ。そんなこと、知りもしないんでしょうけど」
しょぼくれた小さな背中はAが嫌いな貴族の面影はしない。
それでも燻るような苛立ちをぶつけてしまった。
知っている。ただの八つ当たりだ。
少年は怒らなかった。驚いたようにAを見上げていた。
その視線に哀れみと同情が混じっているのを感じ、睨み返す。
「ご心配なく。今はもうありますよ」
「ふーん」と答えた声は女性のものだった。
そちらを見ると何かを考えていたのか口元に手を当てていた。
Aの視線に気付くと自然に手を下ろし、ゆるりと口元を緩める。
これは何か聞かれても適当にはぐらかす時の動作だ。イザナやオビのおかげでよく知っているAは、何も言わないことにした。
「さて」空気を変えるようにパシリと手を叩いて、窓辺へと歩き出す。
「じゃあ解決したし帰ろうか。……っておや」
トロウが丁度柵に足をかけた時、微かに足音が聞こえた。
徐々に近づいて来る。
どうやら最初の読みは当たっていたらしい。
「ここにいたか侵入者!覚悟しろ!」
どこを走ってきたのか随分と息を切らせた護衛が叫ぶ。
そのままトロウへと一直線へ走る彼はおそらくAに気付いてもいない。
露骨に面倒臭そうなトロウからの視線が刺さる。
でも残念ながら侵入したところにも護衛対象のところにも現れない護衛は探しようがない。
本当どこ行ってたんだか。
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七草(プロフ) - 紗夜さん» お返事くださっていたのにすみません!!全く気付いておりませんでした!己の睡眠欲に負けないよう頑張ります!ありがとうございます!!! (2021年8月16日 10時) (レス) id: 36eff566e0 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 続きを…続きをください! (2021年6月26日 4時) (レス) id: 5c2d649dea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七草 | 作成日時:2021年5月4日 20時