114 夜闇2 ページ21
「あの気品のあるお兄さんが雇い主ってとこだろ」
「まあ、ね。ご主人だよ」
「へえええそれは驚いた」
「で、トロウ。
俺に何か仕事でも持ってきたんだろう」
「おやバレてた。逢引きのお誘いかと期待して欲しかったものだね」
「お生憎。もう相手は埋まってる。
というかそんな気もないくせに」
「あったら今頃涙に濡れてるさ」
Aを置き去りに遠慮のない掛け合いが続く。
放っておいてるのに抜け出そうとすると締め付けられるから未だに彼の腕の中だ。
トロウというらしい彼女も全く気にする様子もない。どうやら照れているのはA1人だけらしい。
「悪いけどパスで。今そういうのやる気ないんで」
「やばい仕事じゃないよ。人を探してる。
何が不満なのか甘ったれの貴族の坊ちゃんが家出したらしい」
「甘ったれの、貴族」
思わず口を挟んでしまう。
驚いた風のトロウと目が合った。
「おや良い反応。お嬢ちゃんが手伝ってくれるのかい?」
揶揄うような口調はまさかAが手伝うとは思っていないのだろう。
黙ったまんま答えないでいると、少し焦ったように口元に手を当てた。
「え、まさか本気?」
「あー耳塞いどきゃ良かった」
苦々しい声には諦めの色が滲んでいる。
ダメ押しのように抱きしめられ、残った理性が顔を覗かせたがすぐに埋もれた。
貴族の悪行を聞くと煮えたぎるような苛立ちとどうにかなりそうな程の憎悪に駆られるのは最早発作だ。
「是非ともお手伝いさせて頂きたく」
147人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
七草(プロフ) - 紗夜さん» お返事くださっていたのにすみません!!全く気付いておりませんでした!己の睡眠欲に負けないよう頑張ります!ありがとうございます!!! (2021年8月16日 10時) (レス) id: 36eff566e0 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 続きを…続きをください! (2021年6月26日 4時) (レス) id: 5c2d649dea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:七草 | 作成日時:2021年5月4日 20時