110 宿 ページ17
どうも神様は張り切りすぎたらしい。
近くの宿に駆け込むまでに全身濡れ鼠になってしまった。
ちょっとやりすぎだ。
べっしゃべしゃのA達を、にっこにこ笑顔の男性が迎えてくれる。
普段はそう賑わうところでもないらしく、雨が呼ぶ幸運に嬉しさが隠せていない。
「3人部屋２つで宜しいですかね」
「ああ」
毎度あり、と店主から鍵を受け取ったゼンに続き歩き出した矢先にまた扉が開いた。
「いらっしゃい！」と景気よく迎えた声とは対照的に苛立った様子の女性。
良家のお嬢様という風ではない。随分と旅慣れているようだが商人だろうか。
それにしては荷物がないが。
と、注いでいた視線に気付いたのか女性がこちらに目を向けた。
警戒するような鋭い眼差しに思わず身構えたが、すぐに張り詰めた顔は和らいだ。
どこか面白がるように茶色の瞳が輝く。
彩られた人懐っこい笑顔はまるで。
「A嬢？」
少し離れたところから名を呼ぶ声にぼんやりとした意識が浮上した。
いつの間にか他の人は先に行っていたらしい。
怪訝そうな顔をしたオビが階段上から顔を覗かせていた。
「ごめん、ちょっと見惚れてて」
「へえ妬けるね」
軽口に応じたオビが未だに玄関前に立つ女性の方を見る。
「あの人、何だかオビに似てない？」
「そう？」
全く興味がないらしい。
愛想のない返事をしたオビは、笑顔を浮かべている彼女にへらりと笑い返す。
一見親しみ深い、しかし隙のない笑顔。
やっぱりそっくりだ。
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七草(プロフ) - 紗夜さん» お返事くださっていたのにすみません！！全く気付いておりませんでした！己の睡眠欲に負けないよう頑張ります！ありがとうございます！！！ (2021年8月16日 10時) (
レス) id: 36eff566e0 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 続きを…続きをください！ (2021年6月26日 4時) (レス) id: 5c2d649dea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：七草 | 作成日時：2021年5月4日 20時
