104 出立 ページ11
「ちょいと失礼」
軽やかな声と共にAの手から荷物が消え去る。
普段から軽快な彼だが今のオビからはそのうち鼻歌でも聞こえてきそうだ。
馬の背へとくくりつける背中に声をかける。
「随分とご機嫌さんだね」
「そう？」
言葉ほど隠す様子もなく振り返りざまににやりと笑う彼。
理由は知っているでしょう？と言外に匂わせていた。
あのすぐ後。
いつものように急に姿を現したオビは顔を覆うAにギョッとした様子だった。
きっと泣いてると思った彼。しかし微笑むだけの周囲の2人に勘付いたのだろう。
ゆっくり近寄ってきてAの顔を覗き込む。
隠れるように縮こまると忍び笑いが聞こえ、ひんやりとした手に顔を隠す砦が暴かれる。
「おお真っ赤」
今度は隠すことなく上がった笑い声をじとりと睨むが効いた様子はない。
それどころか話の顛末を聞いた彼はまた笑い。
それからずっとこんな調子だ。
「あれで積荷は終わり？」
「うん」
「そろそろ出発出来るか？」
こくりと頷いたのと同時にゼンの声がした。
見ればオビとA以外は既に馬に乗っていた。早い。
慌てて馬に乗り込もうとすると「お姉ちゃん」とローブが引っ張られた。
掴んでいるのは先程別れの挨拶をしたばかりの少年。
まだ何かあったのか。
どうかした？と聞いてもふるふると首を振る。
むすりとした顔のまま黙る少年に困ってオビを見る。
「寂しいんだろ」
ああそういうこと。
簡潔な答えに少年の頭を撫でる。ふわふわと柔らかい。
「……もっと」
「それはダメ」
代わりに答えた彼がAを荷物のごとく持ち上げ馬に乗せる。
そうして自らも後ろに乗り込む。
荷物のような扱いに怒れば良いのか、乗せてもらったお礼を言えば良いのか。
あっという間に起こった出来事に悩むAに「お前大人気ないぞ」「何がです？」と掛け合う声は聞こえなかった。
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七草(プロフ) - 紗夜さん» お返事くださっていたのにすみません！！全く気付いておりませんでした！己の睡眠欲に負けないよう頑張ります！ありがとうございます！！！ (2021年8月16日 10時) (
レス) id: 36eff566e0 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 続きを…続きをください！ (2021年6月26日 4時) (レス) id: 5c2d649dea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：七草 | 作成日時：2021年5月4日 20時
