34 記憶(前編) ページ35
気持ちを落ち着かせるために深呼吸する。
よし、大丈夫。
一気に結び目を解く。
少しでも躊躇うとできなくなる気がしたから。
＊
「A、だよな？」
ゼンの目がまん丸になる。
自分の姿を目にしたゼンの反応は予想できた。あと白雪さんとミツヒデさんも。
が、冷静な木々さんまで驚いているのは新鮮だった。
「昔話を、したい」
そう切り出すと、面々の表情が変わった。
「私はタンバルンの海に近い城下街に住んでいたんだ」
目を閉じると今でも鮮やかに思い出す。
意識が過去へと戻って行く。
記憶の中にある街はいつも賑やかだった。
酒屋から聞こえる酔っ払いの歌声や威勢の良い売り子の声で溢れかえる街は、静まる時がない。
互いに仲が良く幸せだった。
だから危機感なんてものを知らずに育ったAは、よく1人で出かけていた。
あの日もそう。
汽笛の音に誘われて船を見に行ったんだ。
「おやお嬢ちゃん。今日はどこに？」
顔なじみのおじいさんに声をかけられる。
「おふねがきてるでしょ！みにいくの」
興奮気味に目を輝かる。
今にも走り出しそうな少女に「気ぃつけてな」と笑った。
たどり着くと丁度大きな商船が停泊するところだった。
船に向かって手を振ると、船員たちが手を振り返す。
気が済んだ少女は帰ろうとした時、海の向こうに見慣れないものを見つけた。
「あれもおふね？」
降りてきた船員に話しかける。
少女が指差す方を見た見た船員は顔を青くした。
「海賊だ！」
その声に空気が変わった。
「逃げろ」
「なんでここに」
混乱が広がっていく。
蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
立ち尽くす少女の手を船員が掴み走る。
しかしあまりの人波につないだ手は外れてしまった。
「どうしよう」
そう呟いてもすぐに怒号にかき消される。
頼りなく歩いていた少女は誰かにぶつかり、しりもちをついた。
見たことない薄汚い格好の大男が少女を見下ろす。
「こりゃ上玉だ」
舌なめずりをした男が少女の髪をつかんだ。
まるでモノを掴むかのように容赦ない力に抵抗などできなかった。
「いやっ！たすけ」
最後まで叫ぶことは許されなかった。
口に布が当てられると、急に視界が暗くなった。
＊
いつの間にか埃っぽく薄暗い部屋に転がされていた。
周りを見ると、自分と同じくらいの年齢の子どもしかいない。
みんな同じように手と足を縛られていた。
ここは、どこだろう。
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七草(プロフ) - みおさん» わー指摘ありがとうございます！書いている自分でもなんか違う気が…？って感じだったので助かりました_(:3」∠)_訂正しときます〜 (2017年5月19日 23時) (
レス) id: ee557d4a40 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - コメント失礼します！いつも更新されるの楽しみにしています！！私の勘違いかも知れませんがオビはキハルのことをトグリルと呼んでいたと思います！ (2017年5月19日 17時) (レス) id: 7eccd963e8 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - 意味に変わりはありませんが、『更新は遅めで』→『更新遅めで』です(･ω･`) (2017年5月15日 0時) (レス) id: ee557d4a40 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - まりねえさん» 温かいお言葉ありがとうございます…！更新は遅めで申し訳ないです(；ω；)なるべく頑張ります！ (2017年5月15日 0時) (レス) id: ee557d4a40 (このIDを非表示/違反報告)
まりねえ - とってもおもしろいです！ 更新頑張ってください、待ってます！ (2017年5月14日 21時) (レス) id: c914c93a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：七草 | 作成日時：2017年3月27日 22時
