鈍感嬢と黒猫【赤髪の白雪姫】

3 野良猫との出会い(後編) ページ4

再び男の元へと駆け寄る。
懲りないね、と呟いた彼は今度は苦無を投げなかった。


『思いやり』で短距離戦にしてくれるらしい。
どこまでも腹ただしい人だ。


絶対一矢くらい報いてやる。



間合いを詰めたAに苦無が襲ってきた。
体をひねって避け、お返しの短剣を突き出す。
男は後ろに体を傾けて難なく避けた。


(今だっ)

ローブを脱ぎ捨て、それを男の目の前に広げる。
Aの予想外の動きに男の動きが一瞬止まったが、
すぐに地面に払い落された。


だがそれでいい。
その一瞬が欲しかった。


「ちっ」


つーっと男の頰に血が伝った。
奇襲作戦は成功したらしい。


「これでおあいこですね」


「わー負けず嫌いなお嬢さんだこと」


にこりと悪戯が成功した子供のように笑うAに
男もへらりと笑い返す。


互いに間合いを測り直しつつ、様子を伺う。
Aが動こうとした瞬間


張り詰めた空気が壊れた。



「ああっお前こんなとこにいたのか！」


茂みから突然知り合いが出てきたのだ。


「主！？」
「ゼン！？」



……え、今あるじって言った？

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