24 混迷 ページ25
イザナが去った後もAは座ったままだった。
廊下を過ぎる衛兵に敬礼を返しながら、ぼんやりと考え込む。
そのうち気づく、か。
ということは理由はお酒じゃないんだろうなあ。
イザナの浮かべた楽しそうな笑顔を思い出し、Aは苦笑した。
シーツを運ぶメイドと目が合い、慌てて笑みを消す。
Aの奇行に若干不思議そうな顔をしたが、会釈してすぐに走り去って行った。
きっと忙しいのだろう。
そういえば今日はお客さんが来るんだっけ。
考え込んでいる場合じゃない。
私もゼンの元へと行かなきゃ。
＊
ゼンの執務室にはゼンしかいなかった。
気配で察していたが、オビがいないことにホッとする。
「今日はお客さんが来るんだよね。
島民と揉めているから話を聞いてほしいんだっけ」
「ああ。
その島民を代表して来るのは女性らしい。
Aに侍従を頼んでもいいか？」
問いかけるその瞳に不安が見え隠れしているのは、きっとAを心配しているからだろう。
嫌なら断っても良い、と言外に述べていた。
「うん。緊張してるだろうから、王城の人らしくない人の方がいいと思う」
安心してもらえるように力強く頷く。
人前を怯えるのはもう卒業したのだ。
Aの答えに、ゼンが安心したように微笑んだ。
「王城の人らしくないと自覚しているなら、ローブは脱いでおけよ」
かっちりとした制服を手渡される。
いかにも動きにくそうで嬉しくない。
嫌な顔をすると、意地悪く笑ったゼンに付け加えられる。
「ちなみにそれは兄上が先ほど持ってこられたものだ」
「……ありがたく頂戴します」
受け取れない訳がない。
そしてさっき出会った理由はそれか。
複雑な顔をするAに笑ったゼンがふと呟く。
「そういえばオビにも渡さないとな」
小さな声だったのに、妙によく聞こえた。
オビ。その単語だけで体温が急激に上がる。
「A？どうしたんだ？」
側から見ても不審だったらしい。
ゼンが慌てた。
「な、なんでもない！」
これ以上妙な反応を見せる訳にもいかない。
下へと飛び降りる。
その行為が最も変だとAに考える余裕はない。
名前だけでこんなに動揺するなんて。
もう自分がわからない。
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七草(プロフ) - みおさん» わー指摘ありがとうございます！書いている自分でもなんか違う気が…？って感じだったので助かりました_(:3」∠)_訂正しときます〜 (2017年5月19日 23時) (
レス) id: ee557d4a40 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - コメント失礼します！いつも更新されるの楽しみにしています！！私の勘違いかも知れませんがオビはキハルのことをトグリルと呼んでいたと思います！ (2017年5月19日 17時) (レス) id: 7eccd963e8 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - 意味に変わりはありませんが、『更新は遅めで』→『更新遅めで』です(･ω･`) (2017年5月15日 0時) (レス) id: ee557d4a40 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - まりねえさん» 温かいお言葉ありがとうございます…！更新は遅めで申し訳ないです(；ω；)なるべく頑張ります！ (2017年5月15日 0時) (レス) id: ee557d4a40 (このIDを非表示/違反報告)
まりねえ - とってもおもしろいです！ 更新頑張ってください、待ってます！ (2017年5月14日 21時) (レス) id: c914c93a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：七草 | 作成日時：2017年3月27日 22時
