鈍感嬢と黒猫【赤髪の白雪姫】

16 王子と従者(前編) ページ17

「不束者ですが今日からよろしくお願いします。
ゼン殿下、ミツヒデさん、キキさん、オビさん」


「こら、そういうのはなしだ」


頭を下げようとすると、ゼンに押しとどめられた。


「最近お前とあまり話せなかったからな。
時間ができて良かった」


この王子様はこんなことをいつも自然に言うから、逆にこっちが照れてしまう。


「私も、良かったかな」


頰をかきながらそう返す。
穏やかな顔をして見守っていたミツヒデも話に入って来た。


「そうそう。ゼン寂しそうにしてたもんな」


「ミツヒデもね」


「キキ！」


キキの指摘にミツヒデが赤くなる。
昔から変わらないやり取りにAは頰を緩めた。


「そう言えば」

キキへ非難する瞳を送っていたミツヒデが、ふとAの方を向いた。


「Aはオビの名前知ってるんだな」


そう言えば確かに謎なことだろう。
不審者と間違えて攻撃しました？
だめだ絶対ミツヒデさんに怒られる。

どう答えたものか口ごもっていると、先にオビが口を開いた。


「やだなあ旦那。そこに突っ込むのは野暮ってものですよ」


「いや何でだよ！？」


なぜか責められたミツヒデが慌てる。
さらにキキの冷たい視線に気づきより焦っていた。

ただキキの口角は上がっていた。
悪ノリしているだけだろう。

じゃあ放っておいてもよさそうかな。
小さく笑ったAはふと気づいた。


さっきからずっと、オビは少し離れた窓に腰掛けている。


「あまり話に入って来ないんですね」


近づいて問いかけた。

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