14 ラジの帰国日(5) ページ15
「貴殿もタンバルン出身なのか？てっきりクラリネス王国出身かと」
「色々あったので」
そう吐き捨てるAの瞳は剣呑な光を宿していた。
そのあまりの冷たさにラジは息を呑んだ。
表情に出ているとわかったのかAは「すみません」静かな声で詫びた。
そして落ち着かせるためか瞳を閉じる。
「それより先ほどの言葉、お願いしますよ」
再び開いた瞳からは先ほどの光は消え失せていた。
しかしまだラジの心臓は跳ねている。
「そ、そんなこと言われずとも、わかっている」
どもりつつそう返したラジの視界に側近が見えた。
助かった、と安堵の表情を見せた後いそいそと走り去っていった。
「これで少しは懲りるといいんですけどね」
空気を払拭しようとわざと明るい声を出す。
「！ そうですね」
意図に気づいた白雪はAに合わせにこりと笑った。
優しさに感謝する。
「これ怒られちゃいますかね」
地面に転がった瓶を指差し、苦笑いする。
すっかり中身は地面に吸い込まれてしまっていたが、Aはおそらく怒られないとわかっていた。
「そんなことはないと思いますよ」
答えに白雪は怪訝な顔をした。
だが、階段を降りてくる金髪の王子の姿を認めると驚きの顔に変わった。
「あなたはラジ殿といるのが向いていると思うなあ
俺のような男がいる国は嫌だろう？」
ゆっくりと階段を降りつつ、白雪にそう投げかける。
ラジの皮肉よりも数倍辛辣な言葉に白雪の顔がゆがんだ。
(一難去ってまた一難ってやつかな)
口を挟むべきではないとわかっているAは少し離れた。
「イザナ殿下。私はタンバルンに帰るつもりはありません」
「へえ残念だ」
勇ましい言葉にも表情を変える様子はない。
むしろ追い詰めるように白雪へと近づいていく。
だが白雪は逃げなかった。
手を伸ばせばお互いに届く距離まで近づく。
その間も白雪はイザナを見すえたままだった。
「目を逸らさないね。貴方は」
言うが早いか顔を近づける。
反射的にとじた瞼にキスを落とした。
「どうかな姫？嫌になった？」
「なりません。ゼンと出会えた国です」
煽るような口調にも間髪入れずに否定する。
その答えにようやくイザナは表情を和らげた。
(おめでとう白雪さん)
祝うAはイザナの視線に気づいた。
何の用か目で問う。
「お前にも話がある。部屋に来なさい」
それだけ言って去っていってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
七草(プロフ) - みおさん» わー指摘ありがとうございます！書いている自分でもなんか違う気が…？って感じだったので助かりました_(:3」∠)_訂正しときます〜 (2017年5月19日 23時) (
レス) id: ee557d4a40 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - コメント失礼します！いつも更新されるの楽しみにしています！！私の勘違いかも知れませんがオビはキハルのことをトグリルと呼んでいたと思います！ (2017年5月19日 17時) (レス) id: 7eccd963e8 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - 意味に変わりはありませんが、『更新は遅めで』→『更新遅めで』です(･ω･`) (2017年5月15日 0時) (レス) id: ee557d4a40 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - まりねえさん» 温かいお言葉ありがとうございます…！更新は遅めで申し訳ないです(；ω；)なるべく頑張ります！ (2017年5月15日 0時) (レス) id: ee557d4a40 (このIDを非表示/違反報告)
まりねえ - とってもおもしろいです！ 更新頑張ってください、待ってます！ (2017年5月14日 21時) (レス) id: c914c93a5f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七草 | 作成日時：2017年3月27日 22時
