【酔っていたのは】正門良規 ページ2
私は今日、会社の同僚である正門くんと飲みに行く。
本当は福本くんと３人で飲みに行く予定だったけれど、急用ができたそうで、私達は二人で飲みに行くことになった。
私はずっと正門くんのことが好きだったから、二人で飲みなんて、心臓が持つかどうかわからない。
たぶん福本くんは、私が正門くんを好きでいることを知っていて、今日来ないのだと思う。
本当に策士な男だ。
こんどスタバ奢ってやろう。
かなりシーンとした店内。
カウンターに二人で座る。
なんだか雰囲気があって、緊張してしまう。
「‥静かだと、緊張するね。ただの 同僚どうしなのに。」
そんなふうに気持ちを紛らわすための拙い言葉が溢れる。
正門「たしかに、そうかもしれんな」
そう言いながら彼はくしゃりと笑った。
少しずつ時間が経っていって、お互い酔ってきた。
いや、正門くんが変な酔い方をしている。
ここへ来る前福本くんに頑張れよと言われたのはこのことだったのか。
正門「Aさぁ〜ん、おれ、まだのめるで〜」
「だめ、正門くん、お水飲もう？」
すると彼はあーと言いながら口を少し開いた。
何をしてほしいのかわからず、首を傾げていると、彼が水の入ったコップを持ち上げ、私の口に水を含ませてきた。
「！？」
すると、吸い付くかのような、甘く深いキスが降ってきた。
水が口から口へ移動する。
腰が抜けそうになって、彼の着ているYシャツを握りしめる。
シワができてしまう。
なんだか思考はふわふわとしていて、彼をぼうっと見つめることしかできない。
その後数分したらなんだか眠くなってきた。
正門「ただの同僚は、寂しいやん？」
落ちる視界の隅に映ったのは、素面の彼の優しい笑顔だった。
福本くんの言葉は、どうやら違う意味だったらしい。
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作者名：くも | 作成日時：2023年9月18日 0時
