【８球目】視聴覚室にて ページ24
放課後の学校には部活動の生徒しかおらず校舎にはほとんど人がいない。
以前は、部活に入っていなかったため放課後になるとすぐに家に帰っていたが、生徒会に入り放課後の学校に残ることが多くなった。
しかし、私は放課後の学校というのは嫌いではない。
運動部のホイッスルの音、ランニングの掛け声、テニスボールを打つ音。それらを聴きながら作業しているときが一番はかどるのだ。
『確か菊丸君は視聴覚室って言ってたよね』
...しかしながら、だからといってすべての仕事が終わるわけではない。
息抜きも必要だ。
そう自分に言い聞かせて私は視聴覚室のドアをノックした。
「はーい、誰じゃ？」
中からは竜崎先生の声がした。
『生徒会の高倉です。手塚君いますか？』
「おー高倉か！手塚ならここにおるぞ、入ってこいー」
『ありがとうございます。失礼しまーす』
視聴覚室に入るとそこには竜崎先生と大石君と手塚君の３人がいた。
「やあ、高倉さん！ちゃんと話すのは久しぶりだね」
『クラスが離れてから廊下ですれ違う程度だもんねっ！久しぶり大石君』
「どうかしたのか高倉」
『書類の中に手塚君のサインが必要なものがあるから書いてもらおうと思ったんだけど...』
ちらりと机の上を見るとそこには書きかけのブロック表があった。
どう見てもまだ途中のようだ。
『部活の方が忙しそうだね、また出直すね』
私はそう言って生徒会室に帰ろうとすると...
「いや、サインを書くだけならすぐ終わる。だから少し待っていてくれないか？」
手塚君からまさかの提案をされた。
はじめは遠慮しようとしたが、生徒会室に帰ったところで切れた集中力が戻るわけではないと思い...
『そお？...じゃ、待たせてもらうね』
手塚君のお言葉に甘えて私は視聴覚室で待たせてもらうことにした。
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作者名：おりひめ | 作成日時：2020年1月26日 16時
