わたなべものがたり (ページ9)

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ボーイわたなべくんページ9

夜のネオンが輝く街並み。

もう日付けが越えたとゆうのにざわめきは止むことはない。

今日もまた知らない親父に愛想笑いの時間が始まる。

『リナちゃんはいつも可愛いね～ニコニコしてて。家に帰ると豚しかいないからほんとやんなっちゃうよ』

なんて言いながらドレスからのぞく太ももをなでる。気色悪い。

『そんな事言っちゃダメですよ！奥さんだって頑張ってますよ？さ、飲みましょ？』

だいたいが職場の愚痴、家庭の愚痴、下ネタ。

何を聞かされてもちゃんと聞いてる事なんてひとつもない。

『リナさん次のテーブルお願いします』

『はい。じゃあまたね～』

ふーっと息を吐きタバコに火をつける。

『タバコ似合わないよ』
鏡ごしにはボーイのショウタが立っていた。

『なんなの？説教しに来たわけ？それもここ男性禁止ですけど』

『さっきの客。誰が助けてやったと思ってんの』

そう。わたしが嫌な客に当たると絶対にショウタは逃がしてくれる。

『……ありがと。』

ショウタとはいつからか仲良くなった。
仲良しとゆうのか分からないが、女の子達に馴染めないわたしをいつも気づかってくれた。

『てかさなんでそんな嫌々やってんの？嫌なら辞めたら？』

『ショウタには関係ないでしょ』

元々こんな仕事やりたくてやってる人なんていない割がいいから働くだけ。

『そっちこそ早く辞めたら？』

『本当はもっと早く辞めるはずだったわ。……けどお前が気になって辞めれねーの』

『は？どうゆう事？』

鏡に顔をむけると既にショウタに包まれていた。

『そんなせつない顔すんなよ。何かあれば言えよ』

わたしの全てを見透かしたように言う。

『おーい、ショウタどこだー？』

今行きますと声を張り上げ背中の温かさは消えた。

『なんで？……』

わたしの肩にはショウタの涙の痕が残っていた。