わたなべものがたり (ページ3)

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ペットのわたなべくんページ3

“ただいま～“

数日前まではそう言っても真っ暗なこの部屋には
私の声が響いているだけだった。

“おかえり～“

でも今は違うのだ。

『ただいま、しょーた』

私はペット(男の子)を飼い始めたのであった。

『今日はご飯何食べたい～？』

好き嫌いが多い彼には手間がかかる晩ご飯。

でもそれを作るのがまた楽しみの一つ。

『ハンバーグがいいなぁ』

ソファにちょこんと座り、甘えた声を出すもんだから期待に答えたくなる。

そしてそんな私にもご褒美の時間が待っているから。

『A～今日もお疲れさま』

後ろから温もりを感じると思えばしょーたからのご褒美の時間だ。

ご褒美って言ってもただしょーたが後ろから抱きしめてくれるだけでそれ以外やましい事はしたことがない。

それだけで、ただそれだけですごく癒される。

上司からの小言や言うことを聞かない部下。

満員電車での通勤。

親からの電話。どうでもいい男からのメール。

嫌なことぜーんぶ忘れられる。

『しょーた。いつもありがとう。』

そう言うと力強くギュッと抱きしめてくれる。

『僕ができるのはこれくらいしかないから』

耳元でふわっと消えそうな声でつぶやくしょーたを離したりできないのだ。