【ホラゲ】短編集。

【りるれふ】雨の災い ページ2

※男主です


「Aさん、今日はいい天気ですし一緒に山菜を取りに行きませんか？」


とある昼下がり。
同じ村に住む山菜取りが俺に声を掛けてきたのが始まりだった。


そして今。


「すみません……雨が降ってきてしまって」


しょんぼりと肩を下げる彼女。
別に彼女が謝る事ではない。
俺も彼女に誘われて嬉しかったし。



『大丈夫。山菜取りが謝らなくていいよ。この雨も急に振りだしたし』

「ごめんなさい……」


しかし彼女は顔をあげない。
よく見ると肩も少し震えている。
これは雨が寒くて、という事ではないのだろう。



『ほら泣かない。山菜は、また今度一緒に取りに来ようか。今日の晩飯が無いなら俺の家に来てくれたらいいから』

「え…？ いいんですか……？」

『勿論いいよ。俺もこの前、山菜取りに飯奢って貰ったからさ』

「ふふ、じゃあお言葉に甘えて」


にっこりと笑う彼女は雨の中でも、よく映える。
その笑顔に少しきゅんと来たのは秘密だ。



『何処か雨宿りできる所を探そうか』

「そうですね」


山菜取りが歩き出した俺の後ろをちょこちょことついてくる。
ヒヨコみたいな奴だな……


歩くのが遅い彼女の手を引いて森の中を歩いていると大きなお屋敷が。
よし、ここにしよう。


『ここで決定かな』

「あ、ありがとう」

『どういたしまして』


滅多に聞かない彼女のタメ口。
俺の方が羊飼いよりも信頼されてるんじゃね？


『お、開いてるな。
じゃあ俺、話つけてくるわ』

「ありがとうございます」


俺はドアノブを捻り、屋敷に入る。
ここなら仮に雨が強かったとしても雨宿りできるな。
そして雨がやんだら帰ればいい。



俺は屋敷の中へ一歩踏み出した。
それが彼女の死のリミットが開始された瞬間だった。

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