【ホラゲ】短編集。

【Ib】ピアノを弾く絵画。 ページ1

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ずっと一人だった。
お父さんが居なくなってから。


所詮、私は絵画。
描かれたら周りに見られて終わり。
描いてくれたお父さんなんて、とっくにこの世から消えている。



『はぁ……』


ぶらぶらと足を動かす。
私の絵は外の世界から見ると茶髪の少女が椅子に座って優雅にピアノを弾いているように見えるらしい。


ずっと永遠にピアノを弾いてても楽しくないじゃない。
ましてや私の知人なんて皆、同じ親から生まれた絵。
それは周りの奴から見たら私も、その立場に値するのだけれど。



ずっとピアノを弾く。
黒色のピアノとは対照的な白い壁。
窓1つ無い狭い部屋。


私だって生きてるのよ。
ね？ 私を見つめる女の子もわかるはず。



『イウ"ちゃん、』


長い茶髪に白いブラウスに赤いスカート。

いいなぁ。その髪。
同じ色でも私の髪は伸びないの。
その可愛い服だって。
私の服なんて今着てる発表会で着るかのようなドレスだけなのに。


イウ"ちゃんは私を少し見つめた後、奥の方に立っていた男性の方へ歩いていった。



『いか、ないで＿＿』


手を伸ばす。
絞り出した声は数十年前から変わらない声。


ねぇ、私とお話しようよ。
ここにいる人達はつまんないの。
一緒に手を繋ごう？
この部屋って温度も風も感じないから。



イウ"ちゃんが、こっちに来られないなら、私の方から行ってあげる。
何回も勉強したから。思いやりの心を持ちましょうって！
イウ"ちゃんもこっちに来るのが怖いんだ！


そりゃそうだよね、こんな場所。
だったら私が明るい所に連れてってあげるから。
その代わり私にいろいろ教えて？
ねぇ。




『だからお願い。この手を掴んで』

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