追伸 ━━━━━。【獪岳】

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獪岳の怒気をビリビリと肌で感じる。でも当の私は不思議とそれに恐怖は感じなくて。









「壱の型が基本だっていうけど、それが出来なくても弐の型から陸の型までは使えるんでしょ？応用ができるってことでしょ？使えなくてもいいじゃん、獪岳はすごいよ」









きっと獪岳は自尊心と認証欲求の塊。それでも私はあなたを。不完全なあなたを愛おしいと思った。









「完璧じゃなくてもいいじゃん、完璧な人なんていないよ。獪岳はすごい、だって私獪岳に助けられたもん」









誰がなんと言おうと、獪岳は私の英雄なのだ。にへらとだらしなく笑うと彼は心底呆れたと深い溜息をついた。お腹の底から溜めた息を、思いっきり。









そして頭を掻きながら一言。









「お前変なやつ」









調子狂うわ、とほんの、ほんの少しだけ顔を綻ばせた。きっと普通の人なら気づかない程度。でも私には分かる。









「手合わせするんだろ」









そう言って私に木刀を渡して背中を向けた。滅と書かれた背中がやけに眩しく見えて、目を細めてしまったのを覚えている。あの時、目なんか細めずに焼き付けて置けばよかった。

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