追伸 ━━━━━。【獪岳】

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次の日、珍しく獪岳は鍛錬をしておらずぼーっと縁側に座っていた。獪岳がぼーっとするなんて珍しい。









「獪岳」









名前を呼ぶと緩慢な仕草で振り返る。心底鬱陶しいと言わんばかりの声音で









「ンだよ、お前かよ。ウゼェから消えろ」









酷いことを言われている自覚はあった。でも恋柱様の話を聞いたあとだと、獪岳の言葉は違った言葉に取れた。









「私は、獪岳のせいで悪く言われるなんて思ってないよ」

「……るせぇ」

「寧ろ悪口なんてドンと来い」

「……るせぇ」

「私は絶対離れない。獪岳が1番好き、ずっと好き。1番だよ」









そう言って縁側に座る獪岳の前にしゃがみ込み、彼を見上げる。見上げて笑いかけると私の肩口に顔を埋めた。少し硬い髪の毛が頬を擽る。









「てめぇは俺の調子を狂わせる天才だ」









囁くように呟かれた声を、私の耳は確実に拾った。









「あいつらがお前に手ェ出さねぇように引いたのに、なんでお前から来るんだよ」









恋柱様の言った通りだった。なんでみんなは獪岳の優しさに気づかないんだろう。こんなにも優しい人なのに。こんなにもひたむきなのに。でも、獪岳の良さを知っているのは私だけでいいや。









「決まってるじゃん。獪岳ことが好きだからだよ」

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