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少し考えたあと、獪岳の口から出てきたのはそんな一言。
「そっ……か。なんかごめんね。いろいろ私邪魔だったみたい」
涙が溢れそうだった。最後の方は情けないことに声が震えた。言葉にしなくても伝わる、なんて自惚れて。獪岳の気持ちはこっちに向いてなんてなかったのに。
でも、つないだ手の温もりも。私を抱く優しい手も。全部全部嘘だと思えなかった。思いたくなかった。
これ以上惨めな思いをしたくなくて、走ってその場を離れた。涙で濡れた頬が風に晒されて、酷く冷たく感じた。
何がいけなかったの。何があなたの気に触ったの。やっぱり羽織のこと?私ね、獪岳が初恋なの。だから何もわからないの。言ってくれなきゃ分からない。
獪岳と過ごす予定だったけれど、すっかり手持ち無沙汰になってしまった私は師範のお屋敷に入っていく恋柱様を見つけた。上手くいってるのかな、あの2人。
「師範、ただいま帰りました」
「おかえり。今から甘露寺と甘味処へ行ってくる。戸締りは頼んだぞ」
「分かりました」
無理に口角を上げる。でも頬にある涙のあとを見れば私が泣いたのは一目瞭然だった。鋭い師範じゃなくても気付くだろう。実際に恋柱様にも心配をおかけしてしまった。
「話はあとで聞いてやる。あと他の隊士が稽古場を使っている。時間になったら終わるように言っといてくれ。俺が見なくてもいい内容にしてある」
「了解です、楽しんできてください」
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獪実 - 更新ファイト! (2020年12月20日 14時) (レス) id: b597321c9c (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - pockyさん» ありがとうございます!嬉しいです! (2020年6月30日 20時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
pocky - オォー面白いですね!更新頑張ってくださいね (2020年6月30日 18時) (レス) id: 67e63b3be0 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 冬咲(ふゆざき)さん» 他の作品まで読んでくださったんですね!嬉しい……。確かに善逸はメインキャラなので善逸が正しい、とかそういう雰囲気で話は進んでいきましたが、この話でそう思っていただけたのはめちゃくちゃ嬉しいです!ありがとうございます (2020年5月28日 18時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(ふゆざき)(プロフ) - 他作品の小説であかねさんを知り、せっかく知っているジャンルだからと思って読ませて頂きました。私は前まで善逸を贔屓目で、獪岳に好印象は無かったのですが、この作品を読んで獪岳が好きになりました!後半はずっとボロ泣きで……素敵な作品をありがとうございます! (2020年5月28日 18時) (レス) id: af894d210e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あかね | 作成日時:2020年2月27日 0時