11通目 ページ11
·
その日の藤の花の家紋の家で、獪岳と肌を重ねた。気持ちが通じ合ったその日に身体を重ねるのは、あまりにも早いと思ったが、獣のような目に射貫かれたらもう、頷くほかなかった。
いつ死ぬか分からない鬼殺隊の身。生き急ぐように私を抱く獪岳の髪の毛を梳くように撫でる。
私があれだけあなたを求めていたのに、今ではあなたがこんなにも私を求めてくれている。たったひとつのこの事実が嬉しくて。また涙が滲んできたので隠そうとしたが遅かった。
流れた1粒の涙は目尻を伝って乱れた髪の毛に落ちた。
死ぬ間際まで私の幸せを願ってくれたお母さん。幸せになんてなれない、なんて思ってごめんね。愛する人がいてくれるこの世界は、私には勿体ないくらい幸せです。
「考え事すんな」
「ごめん」
夜はゆっくり更けていって朝起きたら獪岳の腕の中だった。
眠っているのか瞳を閉じたままの獪岳の頬に触れ、そのまま口付けを1つ。
「獪岳」
名前を呼んだが反応がないので、何だか寝込みを襲った気分になり存外それが楽しかったので、彼の顔に口付けの嵐。もう一度唇に自身のそれを重ねようとした瞬間、朝日に照らされても変わらない黒の虹彩が私を捉えた。
「朝っぱらから盛ってんじゃねぇよ」
「失敬な。愛を伝えてただけなのに」
「そういうのを盛ってるっていうんだよ」
160人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
獪実 - 更新ファイト! (2020年12月20日 14時) (レス) id: b597321c9c (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - pockyさん» ありがとうございます!嬉しいです! (2020年6月30日 20時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
pocky - オォー面白いですね!更新頑張ってくださいね (2020年6月30日 18時) (レス) id: 67e63b3be0 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 冬咲(ふゆざき)さん» 他の作品まで読んでくださったんですね!嬉しい……。確かに善逸はメインキャラなので善逸が正しい、とかそういう雰囲気で話は進んでいきましたが、この話でそう思っていただけたのはめちゃくちゃ嬉しいです!ありがとうございます (2020年5月28日 18時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
冬咲(ふゆざき)(プロフ) - 他作品の小説であかねさんを知り、せっかく知っているジャンルだからと思って読ませて頂きました。私は前まで善逸を贔屓目で、獪岳に好印象は無かったのですが、この作品を読んで獪岳が好きになりました!後半はずっとボロ泣きで……素敵な作品をありがとうございます! (2020年5月28日 18時) (レス) id: af894d210e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あかね | 作成日時:2020年2月27日 0時