ヒトトセ、何度も恋をする【煉獄杏寿郎】

春夏秋冬.15 ページ15

·







私はあなたと元々住んでいたお屋敷に帰りました。業者を雇っては家を綺麗にしていたので、そこまでくたびれた様子は伺えませんでした。









家具も、お台所も全部そのまま。時が止まっているようでした。待っていればあなたが帰って来れくれるような気がしました。しかし、それはただの錯覚で。いつの間にか皺だらけになった手が、時間の経過を教えてくれました。









この家にはまだ、キョウジュロウさんの気配が残っています。









あれから幾つの季節を重ねたでしょうか。途中から数えるのをやめてしまいました。物事が目まぐるしく変わりました。









最近は、日が差し込む縁側であなたの遺影に話しかけるのが毎日の楽しみです。可哀想だって？自分が1番わかってますよ。遺影という名の檻に閉じ込めてしまってごめんなさい。









勇敢な顔立ちをしたあなたが遺影の向こうで笑っています。あなたより年下だった私は、あなたより何倍も歳を取りおばあさんになりました。好きな人の前では美しく在りたいのに、こんなみっともない姿では会えませんね。









あなたの褒めてくれた金髪も、真っ白に染まってしまいました。

春夏秋冬.16→←春夏秋冬.14

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す