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あれから3日、特に問題もなく帰れていて、ほらやっぱり考えすぎじゃないかと同僚と話していた。
「誰の授業の準備してるんすか?」
『あぁ、前代未聞の中学留年しやがったヤツと、もう1人の可愛いおバカさんに……』
「五十嵐先生ってたまに口悪くなるっすよね」
ケースケにいかに分かりやすく説明できるか。彼は将来獣医になりたいらしい。正気か?と思ったが、目が本気だった。彼が高校生になれるかは私にかかっている。
あとパーちんくんも受験までもう少しだ。ご両親の不動産会社を継ぐことは決まっているらしいが、高卒は必須なはず。本来なら大卒だけど。
そんな2人のために、私は残業をして2人に合う授業ができるように準備をしていた。
『……随分遅くなっちゃった』
施錠をして塾を出る。時間はもう日付を越えようとしていた。街灯の多い道から帰ろうと歩き出した、その時だった。
「A!」
記憶は声から消えていくと言うが、その声を聞いてしまった以上、なし崩し的に記憶が呼び起こされる。もう二度と聞くことはないと思っていた、聞きたくないと思っていた、彼の声。
無視して歩みを進めると、後ろで「待って」「A!」「話を聞いてくれないか?」などといった、ふざけた呼び掛けが耳に入ってくる。煩わしい、歩調を速くすると彼は走ってきて、私の手を掴んだ。
『触らないで』
即座に振り払い、目の前の彼を睨みつける。
「そんな事言わないでよ……。Aにどうしても話したいことがあるんだ」
『あっそ。私はない』
今更なんだというのだ。姿を見せないで欲しい。オマエは一生あのクソ女と仲良くしてろ。
踵を返して足早にその場を去ったけど、次は追いかけてこなかった。その代わり、
「明日も来るから!」
なんて不穏な言葉を残して。
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蘭奈莉逢瑠悲@カナリア:ルカ(プロフ) - やばい好き。これだからワカは最高なんだ (12月11日 0時) (レス) @page44 id: 4d14879615 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんな(プロフ) - めちゃめちゃ最高でした(TдT)人生のバイブル?にします!子供4人は多いなw (11月4日 14時) (レス) @page43 id: c8a07ba8e1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - とちさん» ありがとうございます、友人の布教活動のおかげ(?)ですかね……絶対役に立たないけどwwwwww (2023年5月4日 10時) (レス) id: 1eabdc05d7 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - NIKOさん» 夢主の反撃が始まりますよォ!! (2023年5月4日 10時) (レス) id: 1eabdc05d7 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - ゆんなさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!続けることにしました! (2023年5月4日 10時) (レス) id: 1eabdc05d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あかね | 作成日時:2022年4月19日 4時