GOAL.97 ページ49
「な……」
多分初めて見せた涙。それに狼狽えた凛は私に手を伸ばしてきたけど、叩き落とした。
『触らないで！嫌い！凛なんて大っ嫌い！』
子どもみたいな癇癪。言いたいことだけぶつけて、まるであの頃と同じ。きっと私たちはその繰り返しなんだろう。
なんで凛がそんな泣きそうな顔するの？先に酷いこと言ったのは凛だよ？「犯す」なんて、冗談でも言って欲しくなかったよ。
しゃくりあげながら泣きじゃくる私に、おろおろしているのが目に浮かぶ。私もなんでこんなに泣いてるのか分からない、けど涙が止まらない。
嗚咽を漏らす私の肩を、凛が優しく抱き寄せたが力強く押し返した。優しくすれば済むと思うなよ、という気持ちと、その顔が昔の凜みたいに、捨てられた子犬のような顔をしていたから。少しだけ許してしまいそうになる気持ちが綯い交ぜになって、どれが本当の自分の気持ちか分からなくなる。
『もうやだぁ……！凛のことでなんて悩みたくない！もうほっといてよ……！』
凛はその場を動こうとしないので、私が離れるしかなかった。ゴシゴシとまだ溢れる涙を拭いながら出口へ向かうと、誰かにぶつかった。
『ごめんなさい』
顔を見られたくないので、一切顔を見ずに謝っておくだけ謝る。失礼なのは分かっているけど余裕が無いのだ。でも手を取られて引き戻されてしまった。
「おまっ……泣いてんのか……？」
ぶつかった人は冴くんだった。眉間に皺を寄せて、怪訝そうな顔を浮かべている。
首を振って否定するが、涙はまだ溢れているので目元を必死でゴシゴシ擦る。それはもう肯定しているようなもので。
「それやめろ。赤くなる」
そう言って冴くんの少し冷えた手が私の頬に触れて、涙を拭う。態度は粗悪なくせに、こういう仕草は柔らかくて優しいから狡い。
冴くんに手を引かれながら、あ、ビブス1枚干し忘れたな、なんて場違いなことを思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1460人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ブルーロック」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
主人公 - 婦人科行ってくれ (2022年12月6日 10時) (
レス) @page31 id: 728d70a890 (このIDを非表示/違反報告)
rion20051222(プロフ) - 記憶消さなきゃのとこ、何回見ても爆笑してしまいます笑笑 神作をありがとうございます🫠🥰 (2022年11月24日 1時) (レス) @page46 id: bb474d7fe4 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - しろごまさん» 好きです！！！！！私も愛してます！！！！！ (2022年10月1日 2時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
しろごま - あかねさんも糸師凛もどっちも愛します！ (2022年9月29日 22時) (レス) id: 1fca91c3e1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - れこさん» 単語で送るの流行ってるんですか好きですwwwありがとうこざいます！ (2022年9月20日 2時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あかね
| 作成日時：2021年9月22日 1時
