八月がずっと終わらなければいい【時透無一郎】

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矢代家に滞在して10日ほどたったその日、僕の鴉が鳴いた。









「任務ヨ！無一郎！」









ああ、とうとう来てしまった、お別れの日。









10日間、僕は1度もAを忘れることは無かった。









でも、もう会わなくなってしまったらAのことを忘れてしまうかもしれない。
覚えていられないなら、と物事に執着しないようにしていた。
でもAのことはどうしても覚えておきたかった。









「………じゃあ、行くね。お世話になりました」









指令が出てすぐ荷物をまとめ、AとAのお兄さんに頭を下げる。
2人は両親を鬼に食われて殺されたらしい。
2人が襲われそうになったところを鬼殺隊に助けられ、そこから藤の花の家紋を掲げるようになった、とAが言っていた。









「兄さん、切り火は私がやっとくし、見送りも全部するから家の事やってていいよ」









Aはそう言ってお兄さんを中に入れた。10日間いて気づいたけれど、たぶんAはどこか悪い。こんな炎天下の中でもどてらを脱ごうとしない。









「無一郎くん、気をつけてね」









切り火をして、Aは見送ってくれた。









…………はずだった。

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