八月がずっと終わらなければいい【時透無一郎】

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「開けてもよろしいでしょうか」








その声を聞くとAは慌てふためいた。









「まずい、兄さんがこの部屋に入ってくる！」









なにがまずいのだろうか。
頭に疑問符を浮かべていると、Aは茶目っ気たっぷりに









「私がここに来たこと内緒にしといてね」









と人差し指を唇に当てがたい笑って掃き出しの窓から縁側に出ていった。
そんな表情もできるんだと、とてとてと歩く姿を見送った。









医者の診察を受け、診断は肋３本の骨折。
大事を取って当分休ませてもらうことになったが、僕は柱だからいつ任務が入るかわからない。
いつでもいける状態にしとかなければ。









湯浴みをしている最中、僕は重大なことを言っていないことに気づいた。









物事を覚えていられないこと。









もし明日、僕がAのことを忘れてしまっていたらどんな顔をするだろうか。









悲しむのかな。
怒るのかな。
分からない。









でもただ一つ、間違いなく思えることは。









Aの笑顔をずっと見ていたいってこと。

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