八月がずっと終わらなければいい【時透無一郎】

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Aは薄く目を開いてまた閉じた。









「……い、さむい……」









消えそうなAの声に耳を傾け、必死で聞き取る。








「寒いんだね。分かった」









ありったけの掛け布団を持ってこようと布団を出ようとするけどAが裾を掴んだ。









「やだ……やだ、むいちろ、くん。いかないで」









意識が朦朧としているのか舌足らずな喋り方。









Aが温もりを求めるように僕を抱き締めるから、僕も強く抱き締め返す。









「大丈夫、ここにいる」









一瞬過ぎった死というワードを振り払うように。
半ば自分に言い聞かせるように言った。









大丈夫、Aはここにいる。









気づけば必死で彼女の背中をさすっていた。









どれぐらい経っただろう、Aの震えは段々収まり先程と同じ規則正しい寝息が聞こえてきた。









張り詰めていた糸が切れた。
体中の力が抜ける。









しかし依然Aは僕に抱きついたまま。









暑くて暑くて仕方なかったけれど、僕は眠ってしまった。

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