アイロニー【伊黒小芭内】

9個目 ページ9

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新人隊士が、鬼を連れているという報告が鎹鴉を通して告げられた。









いつも通り木に登って高みの見物をする。ここは鬼を滅する部隊。その諸悪の根源である鬼を連れているなど、正気の沙汰とは思えない。









しかも柱であろう冨岡まで隊律違反をしていて頭痛がしてくる。おかしいだろう。何を考えているのかよく分からない。









挙句の果てそいつは









「禰豆子が鬼になったのは二年以上前のことで、そのあいだ禰豆子は人を喰ったりしていない」









などと主張してきた。人を喰わない鬼なんているものか。









「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、柱なんてやめてしまえ！」









善良な鬼などいるものか。









忌々しい蛇鬼の姿を思い出す。そいつに傷つけられた、もう塞がっているはずの醜い傷跡がズクンと痛んだ。









不死川が自分の腕を傷つけ、鬼の醜さの証明をすると言った。俺はそれに異論はなかった。不死川の血は稀血の中でも希少価値の高い稀血だからだ。









しかし、鬼の妹は不死川こ血濡れの腕から顔を逸らした。兄の言葉が聞こえたのもあるだろうが、飢餓状態であるはずの鬼が、ご馳走である稀血の人間を喰わない、そんな非現実的な光景を前に、俺はお館様の仰ったことに頷くしかなかった。

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