アイロニー【伊黒小芭内】

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鬼に対して憎しみの刃を振るった。この世に鬼さえいなければ、どれだけの人が泣かずに済んだのだろう。幸せな家庭を築けていたのだろう。









あれから俺は炎柱の煉獄家に引き取られた。鬼殺隊に入りたいと言った俺の願いを炎柱は聞き入れてくれた。しかし俺は煉獄に比べ非力で体躯も良くない。









力強さが特徴の炎の呼吸を扱うのは難しいとされ、基本の水の呼吸の育手を紹介してもらった。そこで俺は派生である蛇の呼吸を身につけ、晴れて鬼殺隊となった。









鬼に脅かされる人を助ける、人の命を1つでも多く救う。感謝されることで自分がいいものになれた気がした。









下弦の鬼を倒して柱に就任し、程なくした頃。甘露寺という煉獄の元継子が柱になった。









梅や桜の花といった桃色が似合う女性だった。桜餅色から若草色に変わっている髪の毛が、相乗効果をもたらして木花によく映えた。









甘露寺に草花が似合うなら、Aさんには夜空が似合っていた。夜空を背景に、月明かりに照らされて微笑むその風光は8年近く経った今も忘れることができない。









どこを探しても甘露寺とAさんが似ているところなどないのに、俺は無意識のうちに甘露寺と彼女を重ねていたのだ。

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