アイロニー【伊黒小芭内】

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「行こっか」









Aさんが再び俺の手を引いて森を抜けるため走り出した時、蛇鬼の姿を捉えた。









蛇鬼の攻撃が俺を庇ったAさんの腕にあたり血が吹き出す。









「いった……やっぱりすぐは治らないか……」









ボソッとAさんが何か言ったので聞き返そうとしたが、彼女は突然俺の手を離した。









「私が時間を稼ぐから、小芭内くんは逃げて」

「で、でも」

「大丈夫、大丈夫」









有無を言わさぬよう背中をトンッと押されたのを合図に、俺は後ろ髪を引かれながらも走った。









しかし暫くすると蛇鬼が再び襲いかかってきた。Aさんはどうした？捕まりかけたその瞬間、目の前で炎が上がった。ゴトリの落ちた蛇鬼の頸。









「クソックソッ！あの女のせいだ！あの女のせいで喰えなかった！！あの逃れーーー」









何かを言いかけてその鬼は塵へと化した。俺を助けてくれた、真剣を持つ人に縋りつく。その人への謝礼の言葉も忘れて、Aさんを助けてもらうよう頼んだ。









「向こうに！向こうにまだ人がいるんです……！」

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