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彼女は俺の格好を見た途端走って逃げた。彼女を口説いていた男は何か声を上げていたが、それも無視をした。時透は帰ったのだろう。
Aさんは段々走る速さを落とし、遂には立ち止まった。
「騙してるつもりはなかったんだけど、ごめんね。小芭内くん鬼殺隊入ったんだね。それもそうか、あんな思いしたんだもんね」
矢継ぎ早に捲し立てるAさんは前髪をクシャッと握って、誰が見ても一目瞭然の作り笑いを浮かべた。
「小芭内くんと出会ってからなんでか分からないけれど、『この子は私が守らなきゃ』って思って、珠世……医者のところに行って体を弄ってもらったの。でも、ダメだ。今までたくさんの人を喰べてきたから」
Aさんは自嘲的な笑みを湛え、俺の刀を手に取り驚くことに己の頸に当てた。
「私の頸は小芭内くんが斬って」
ぐっと少しだけAさんが力を加えた。柔い頸。白い肌に似つかわしくない赤い滴がAさんの首筋を伝って、質の良さげな着物に染みた。
「鬼殺隊なんでしょう?しかも強そうだし。もしかして柱かな?鬼に情けを掛けてるわけじゃないよね?」
今自分が殺されようというのに、まるで第三者を俺に殺させるかのような他人事の物言いだった。
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美穂(プロフ) - 凄く素敵な作品でした^_^ (2022年6月12日 20時) (レス) @page26 id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 永久さん» やっとこさ完結しました!イラストほんまにありがと!! (2020年6月2日 19時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - おー!完結おめでとう!!紹介ありがとう!!(色んな意味で泣 (2020年6月2日 19時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
夏巻 - エフェメラル頑張って完結したのでお知らせに参r(」^v^)」(森へお帰り) まじであかねさんの文章力分けて下しぇっ⊂⌒~⊃。Д。)⊃ (2020年5月31日 13時) (レス) id: 224dfaba1e (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 夏巻さん» 読みます読みます!ありがとうございます! (2020年5月30日 21時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あかね | 作成日時:2020年3月16日 0時