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2個目 ページ2

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そこから2人で簪と彼女の長く伸びた爪で穴を掘る作業が始まった。









彼女はAと言うらしく、歳は21歳だと言った。彼女は俺を小芭内くんと呼ぶようになり、また俺も彼女をAさんと呼ぶようになった。









鏑丸が迷い込んできた時は、2人で静かに声を立てないように笑った。俺の首に巻き付く鏑丸をひと撫でしてAさんは言った。









「白蛇は幸せの象徴っていうからね。きっとここを出た小芭内くんに幸せがあるって事だよ」









彼女が笑った気がした。









続けて彼女はまた口を開いた。









「その口元の包帯はどうしたの?」









Aさんはそっと俺の口に、包帯越しに触れてきた。どうして暗闇の中で、俺の口元の包帯に気づいたんだろうと不思議に思っていた。すると彼女は心を読んだかのように少し気まずそうに言った。









「なんかごめんね、探るような真似しちゃって」

「いや……問題ない」

「私ね、ちょっとばかし夜目が利くの。だから小芭内くんの綺麗な瞳も見えてるよ。無理にとは言わないけど……」









この目で生まれてきたからあの蛇鬼に目をつけられた。忌まわしいと思っていた、この目が。Aさんの一言で少しだけ好きになれた気がした。









だからAさんには何を見せても大丈夫だと思った。俺はゆっくり包帯をとった。Aさんになら軽蔑されない気がした。もう傷は塞がっていた。Aさんの表情は相変わらず見えないけれど、









「酷い……」









そう呟いた彼女の声が涙に濡れていたから、俺は格子越しに手を伸ばして、影像だけ見えるAさんの頭を恐る恐る撫でた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 伊黒小芭内   
作品ジャンル:恋愛
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美穂(プロフ) - 凄く素敵な作品でした^_^ (2022年6月12日 20時) (レス) @page26 id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 永久さん» やっとこさ完結しました!イラストほんまにありがと!! (2020年6月2日 19時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - おー!完結おめでとう!!紹介ありがとう!!(色んな意味で泣 (2020年6月2日 19時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
夏巻 - エフェメラル頑張って完結したのでお知らせに参r(」^v^)」(森へお帰り) まじであかねさんの文章力分けて下しぇっ⊂⌒~⊃。Д。)⊃ (2020年5月31日 13時) (レス) id: 224dfaba1e (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 夏巻さん» 読みます読みます!ありがとうございます! (2020年5月30日 21時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あかね | 作成日時:2020年3月16日 0時

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