・ ページ12
.
熊谷「木浪さんに、なんか言われたんでしょ?」
「………そういう、たーくんも何か言われたんじゃないの」
オムライスを食べながら
時計の秒針だけが鳴り響くダイニング。
熊谷「『Aの事洗脳させようとしてない?』って」
「洗脳……」
熊谷「俺もわからない。けど、そんな事をしてるつもりは
無いし、お互いに両想いなんだから邪魔すんなって話」
両想いで深く愛し合ってる事に納得していないのか
あの手この手で引き離そうとする木浪さんに悪意を感じる。
熊谷「ねぇ、ブロック解除してないよね?」
「してないよ…なんで?」
熊谷「ん?なんか解除しろとか言われたんかな思って」
「言われたけど私が頑なにしなかった。」
熊谷「偉いね。じゃ、この話は終わり。ご飯食べよ」
話が切り替わった瞬間、無機質だった部屋に彩りが生まれる。
こんな幸せな時間がずっと続いたらいいのに。
.
『幸せ』と感じている時は、周りが見えていない証拠。
出会いはあまりにも唐突過ぎた。
それは電車に乗って自宅に帰ろうとしていた時。
隣に座っていた若いお兄さんが眠りについていた。
「あ、あのー、次で降りるんですけどー」
と言っても眠っていて返事も無い。
そのまま放置して跨いで降りるのは失礼かと思い、
「すみません、通りますね」
と一言だけ言うとお兄さんは「ん?え、あぁ」と目が覚めた。
「ごめんなさい、起こしてしまいまして」
?「いえ、ごめんなさい、んあっ、AirPodsのケース、」
「あぁ、私のほうに転がってたのでずっと持ってました。」
?「本当に何もかもありがとうございます。」
小動物みたいで可愛い、
けどどこか逞しい体をされている、この方は何者なのだろう?
あれからずっと、その男の人を探している。
名前も、普段何されている人なのかも、全くわからない。
.
? Side
先日、電車で隣の席に座った高校生の女の子。
凄く愛想も良かったしハキハキ喋ってて可愛かったなぁ。
俺はまだまだだし、T-SHOPで上手くやれるかなあ。
店長も周りの店員さんも、みんな手際よくて置いてけぼり。
いい事も悪い事も何も起こらず、平凡な毎日。
スマホを眺めながら電車に乗るとそこには
俺が待ちわびたあの子がいるじゃないか。
「あ、あの…」
A「…あ、先日の、」
覚えてくれていたことに奇跡を感じて
マスク越しにニヤけが止まらなかった。
.
27人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:u | 作成日時:2024年3月18日 11時