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熊谷さんから、一件の電話。
出たいようで出たくない、この感情の名前は何?
着信拒否して携帯をテーブルに置いたまま自分の部屋に向かう。
春休み、部活があるから忙しいけど、
憂鬱な日常がずっと続いている。
早く2年生になりたいな、なんて。
でも、目の前に置いてあるのは、
熊谷さんから頂いたピンキーリング。
あの時の私は、きっと周りが見えていなかったのだろう。
どこか、夢を見ていたんだろう。幸せだった。
一気に現実世界に戻された気がして、
私の目から光が消えた。
課題を終わらせ、携帯を置いたリビングに戻る。
見ると熊谷さんから不在着信が5件来ていた。
「…え、」
予感は、何故か当たってしまった。
ピンポーン
「…っ、あっ、はい」
熊谷「俺だけど。どうも。」
「あ、お久しぶりです、?」
熊谷「なんで敬語?とりあえず、逢いに来た」
「……どうして急に」
熊谷「Aに俺の現状を報告しに来たの」
「たーくんの、現状って、」
熊谷「俺、T-SHOPやめたんだ。」
「えっ!なんでそんな突然…」
熊谷「まぁ一言で言うとしたら人間関係が悪化した。あと、あの場所に俺の居場所は無いから。4月から違う仕事しようと思ってんだ。」
「そ、そうなんだ……」
熊谷「Aに聞きたいことが一つだけあって」
「はい」
熊谷「俺と同棲しない?」
それはあまりにも突然で。
今までの抱えていた靄が一気に晴れたような気がした。
「あ…」
熊谷「はいって言うまで俺帰らないからね」
「は、はい」
熊谷「いい子だ。引っ越し準備、手伝ってあげる。」
忘れたかったんだよね、私。
木浪さんの事、好きになりたいって思ってたんだよね。
違うじゃない。
私は何をしているの。
いろんな人に、いい顔を魅せることが得意になってくる。
そろそろ、諦めた方がいいのかな、どちらか。
熊谷「こっち見て」
「ん、」
不意打ちのキス。心臓が高鳴る。
たーくんは独占欲が強い人だ。
私に他の男の事を考えないように、
鎖骨にキスマークが浮かんだ。
触れると、まだ熱を帯びていて。少しだけ愛の痛みを感じる。
熊谷「今日も可愛いよ。A」
この先、どんな景色をたーくんと一緒に見られるのだろう。
熊谷「愛してる」
もう、貴方の沼から、私は抜け出す事は出来ない。だから…
「私も。たーくんの事愛してる。」
って言いたい。
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作者名:u | 作成日時:2024年3月18日 11時