仮眠室の住人５ (ページ11)

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先生と出会ったときの話をするのは恥ずかしい。だけど、思い出話というのは気づけば花が咲くもので、あのときは……っておしゃべりが止まらない。夢中で話すわたしの相手をしてくれていた彼がゆっくりこっちへ歩いてくる。

「わっ、」

渡海「おっとあぶねー」

「先生……」

渡海「気をつけて。やけどしないでよ？」

危うくマグカップを落としそうになった。だって、急に先生が後ろから抱きしめてくるんだもん。ブラックコーヒーのいい香りが広がると「上出来じゃん」って、お得意の子ども扱い。だけど……

渡海「A、よく聞いて。」

なんの前触れもなく聞こえた真剣な声。胸騒ぎがした。なにごとかと振り返ると、珍しく目をそらした先生。交わらない視線に違和感を覚えた。

渡海「俺と約束しよっか」

「…約束？」

見つめることしかできないわたしをぐっと引き寄せたら。覚悟ができたのか、ゆっくり口をひらいた。

渡海「全部が終わったあと、Aも知っていたのかって、責任を問われたとき……。俺とは一切関係ないって言ってほしい」

とてもリアルなもしも話。実際そんなことになったら、わたしは素直に約束を守れるのだろうか。ううん、たぶんきっと………。すぐに頷けなかった、もうそれが答え。

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