仮眠室の住人３ (ページ8)

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078 こそこそ話ページ8

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side ; 世良

ひとり医局に残って縫合の練習をする。Aさんに厳しい言葉を言われてからずっと葛藤していた高階先生が帰って行ったのは、ついさっきのことだ。

遠くから楽しそうな話し声。「先生も食べますか？」「あ！わたしの分！」と、かわいい会話に思わず笑みがこぼれる。医局が明るいことに気づいて、そわそわし始めたのはきっとAさんの方。聞こえてたかな？って、ばっちり聞こえていましたよ。

「お疲れさまです」

A「お疲れさま。今日は当直？」

「いえ、ちょっと自主練です」

A「えらいね……あ。これあげる！」

ごそごそとコンビニ袋を漁って出してくれたのは、彼女がよく飲んでいるりんごジュース。オレンジジュース派だった？と不安そうに首を傾げるから、ぼくは全力の笑顔をみせる。

「ありがとうございます！これで頑張ります！」

渡海「………さっさと帰れよ」

A「んもう先生、そんな言い方…」

後ろから眠そうな渡海先生が歩いてきて、そのまま仮眠室へ。少しもぼくの方を見ることなくドアが閉まった。部屋を見つめる彼女は、とっても幸せそうで晴れ晴れとしている。

A「じゃあ頑張ってね！」

あれからしばらくして、渡海先生とAさんも眠りについた夜も深い時間。いただいたりんごジュースをひとくち。熟した果実の風味は、どこかAさんによく似ていた。

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