090 正と悪 ページ20
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side ; 高階
意識的に避けていた小春ちゃんの病室。開いたままのドアからそこを覗いてみると、やわらかい笑顔で全てを包み込むAさんがいた。すっかり彼女に懐いている小春ちゃんに大人げなく胸が痛む。
担当から外されてしまった僕だけど、小春ちゃんの容態は引き継いだ渡海先生よりも注意深く見ている自信があるのに。なにも手を打つことが出来ないまま、時間だけはあっけないほど早く過ぎていく。
A「お疲れさまです」
「お疲れさま」
医局へと戻ってきた彼女から疲労の色が見えて、圧倒的に僕よりも忙しいことがわかる。それに対して僕は時間が有り余っている。この逃げの姿勢を崩さない僕の姿を見て、小春ちゃんやAさんはなにを思うのだろう。
A「諦めるんですか」
「……」
A「小春ちゃんは諦めていませんよ」
仮眠室に入ろうとしていたはずの足が止まったと思えば、じっと真っ直ぐ見つめられて吸い込まれそう。「ずっと一緒に闘ってきたんですよね」思わず、目を逸らした。小春ちゃんの笑顔がよぎる。
A「本当にお医者さんですか」
「あぁ。」
A「だったら小春ちゃんから逃げないでください！！」
普段のかわいらしさとは違う、僕に挑もうとする口調。思い切り鈍器で殴られたくらいの衝撃。核心を突かれて呆然とする僕を見る彼女は、真剣すぎる表情で訴えかけていた。
A「…必要ないならその医師免許くださいよ」
「え、」
A「出番ないでしょ？あなたが持っていても。」
渡海先生を彷彿とさせる笑み。本物の悪魔とくらべるとまだ愛のあるものだとは思うけれど、Aさんの中にいる悪魔が顔を出した今。僕はハッとした……
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作者名：くまこ
| 作成日時：2018年6月29日 21時
