仮眠室の住人３ (ページ19)

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089 どれも平等のページ19

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そろそろ夏がやってくる。病室から見える景色も日に日に変わって、患者さんを飽きずに楽しませてくれる外の世界は、幼い少女には近すぎるものだった。

小春「お外行きたい」

「行きたいよね」

小春「高階先生が干されたって」

「小春ちゃん……」

ちょっぴり高い窓を覗く背中が切ない。退屈で窮屈な毎日を、小春ちゃんはよく我慢していると思う。「病院なんていやだ！」そう泣き叫ぶこともなく、とても素直で心配になるくらい賢くて良い子。

「ふふ大丈夫」

不安そうな小春ちゃんをぎゅっと抱きしめる。彼女の腕にはいつだって点滴が通っていて、看護師じゃなかったら引きちぎってしまいそうだ。

「絶対に小春ちゃんのところへ戻ってきてくれるから」

大丈夫、なんて。絶対に、なんて。

確証のないことばかり並べる大人でごめんね。

わたしたちがしなくちゃいけないのは、患者さんを救うこと。だれのどの命も平等で、症状が軽いとか重いとか関係ないはずなのにどうも小春ちゃんは後回しにされているようで。行き場をなくした想いが、ゆっくりと心を蝕んでいった。

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