仮眠室の住人２ (ページ14)

今日:7 hit、昨日:56 hit、合計:999,261 hit

049 今のままページ14

.

side ; 渡海

つぎに目を覚ましたときは、とっくに窓の外は真っ暗で月あかりだけが浮かんでいた。体を起こして、すぐとなりの自分のベッドを見るとブランケットを頭まですっぽり被った彼女の後ろ姿。

「……A」

とんとんと肩を叩くと、寝ぼけたAがこっちに向かって寝返りをうった。あまりにもかわいい寝顔で眠るものだから、起こしてしまうのは申し訳なくて。

だけど、その場から離れられなかったのは、なんとなくそばにいたいと思ったから……明確な理由なんて無い。最初に思いついたのがそれなだけ。

「いつまで一緒にいてくれんの」

彼女のことだから「ずっとずっとです！」ってにこにこしながら言うんだろうな。すきだって言ってくれる彼女の気持ちを知りながらも、自分はハッキリしたことを口にしない。それなのにAのことは手放したくないと思ってしまう。

「……ごめんな」

わかってる。彼女の存在が俺のなかで大きくなりすぎていることも、すごく大切で守ってあげたい人であることも。ちゃんと自分でもわかっているつもり。

仕事の延長線上で深まった仲。Aの感情だって一時的なものかもしれないし、自分の抱くものだってそうかもしれない。もしも、互いに別の道を進むことになったら、今と変わらず一緒にいるなんて出来ないと俺は思う。そんな未来があるのなら今の関係性で十分だ。

A「せんせ……」

ぼんやり考えていると聞こえたAの声で我に帰る。心配そうに見つめる潤んだ瞳が俺を捕らえた。

.