069 ; kznr ページ34
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人並みに恋愛はしてきた。鮮明には覚えていない幼き頃の初恋、報われない恋の悲しみ、勇気を出した告白、はじめて受けた告白。成長した今は、特別な感情がなくとも女の子を愛す行為は成り立つ、ということも知った。
だから、それなりに恋愛は上手くできると思い込んでいたんだ。言葉や接し方、女の子が喜ぶポイント、関わる子が増えていくたび学ぶことも多かった。自分の容姿のことも少しずつ理解していたし、近寄ってくる子のほとんどがそれ目当てだということも……、勘づいていた。
智「 ニノ、変わったね 」
「 変わった……？ 」
智「 うん。Aちゃんのおかげかなぁ 」
そんななかでも、彼女だけは違った。なにがあってもそばにいて、飾っている俺のことも毛嫌いすることなく普段通り接してくれて、変わらないままずっとそこにいた。となりで、今もずっと。
何回も傷つけて、泣かせて、怒らせて。愛想を尽かされてもおかしくないはずなのに、なにも疑うことなく信じ続けてくれて、同じ大きさの想いを余すことなく届けてくれた。
いつでも近くにいた人が、こんなに大切な人になるとは思っていなかったよ。知らないうちに、あなただけを見ていたんだ。
「 おーのさん。 」
智「 ん、行っておいで 」
「 まだなにも言ってないです 」
智「 僕にできるのは背中を押すことくらいだから 」
んふふっと、ご機嫌に笑うおーのさん。口を挟むことなく、影から見守り続けてくれた人が「 やっとか〜！ 」と言うから、本当にやっとなんだ。
智「 幸せにしてあげなよ 」
最後は、柄にもなくかっこいい決め台詞を残して切れた電話。街は橙色に染まっている。幸せに……、俺をだれだと思ってるんですか、おーのさん。
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作者名：くまこ
| 作成日時：2018年11月19日 0時
