となりのプリンス ( 2 ) (ページ19)

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ユキさんのかばんを取りに行ったのは、一緒に帰るだけならいいかなって、かずくんから言い出したことだったらしい。散々、いろんな女の子を傷つけて泣かせてきたのに、ふとしたときに見せるやさしいところ。そんなことをするから、みんな本気になってしまうのにね。だけど、とっても彼らしい。

和也「落ち着いてきた？」

よかった……。ひとつ大きな息を吐くと、かずくんがまたやさしく頭を撫でてくれた。重かった体も少しばかり軽くなって、うじうじしていても駄目だって前を向く準備ができた。

ユキさんのことは怖い。とっても怖いけど……。つぎ、なにかを言われたときは言い返せるようになりたい。かずくんがすき。そう宣戦布告でもなんでも、ちゃんと言葉にしたい。強くなるんだ。

「かーずくん」

和也「ん、」

「かずくーん」

和也「はいはい」

ジュースを買いに行くと言って、起き上がったかずくん。となりの温度が消えていく。「なにかいる？」って首をかしげた彼にむかって、甘えるように両手を伸ばす。ぎゅってしてほしくて。ただ、かずくんに抱きしめてほしくて。

和也「どうしたの、Aちゃん」

どきっ。くすぐったい声が耳を掠めた。

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