048 ページ13
.
目を覚ましたのは授業中のときだった。保健室の天井は真っ白なキャンバスのように大きくて、その先には人の手では描けない青空が広がっているように見えた。こんなに感受性豊かなことを思うような人じゃないのにな〜。疲れているのかもと起き上がると、ベッドの端っこですやすやと気持ちよさそうに眠っている人。
「 かずくん？ 」
ふわふわの髪は今日もほどよくセットされていて、半袖は着たくないと長袖のシャツを捲った制服の着こなしは校内のブームになっている。さすが、かずくん。みんなの憧れだもんね。
躊躇いなくすきだと言えていた時間がはるか昔のように感じる。出会って間もない女の子に、呆気なく彼の心を奪われるという大敗は心に深い傷をつけた。それなのに、まだ諦めきれないの自分もいて。
「 ……っ。 」
ユキさんのところへ行かないで。ほかの女の子ばっかり見ないで。わたしのことも女の子としてみてよ。いつか、かずくんのとなりが似合う女の子になれるようがんばるから。だから、だからわたしから……
「 ……離れないで、 」
ぽろぽろ溢れる涙。目を擦るように拭いても止めどなく流れていく。
「 はぁ、ぐす……っ 」
呼吸が早くなってきて、苦しくて、抑えるようにシーツを握ると寝ていたはずの彼がやさしく手の甲を撫でた。
和也「 ………俺が離すわけねーじゃん。 」
ばか。どうして起きてきたの。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 615人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くまこ
| 作成日時：2018年11月19日 0時
