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―――辿り着いたのはロッカールーム。
でも、ここはもう探し尽くしたはずなのに？
「あの…、密岡さん、本当にここっすか？」
『さて、今から山本くんが探すものは3つだよ。』
「(質問の答えになってへん)……3つ？」
『そう、3つ。山本くんが鬼だからね、大丈夫、きっと見つかるから。』
『じゃあ今から10数えたら、鬼が探しに行くよー』
ロッカールームの真ん中に立ち、誰に向けて言ってるのかよくわからない声掛けをして密岡さんが目を閉じる。
…これ、俺に10数えろってことでいいんだよな？
もうこうなったらやるしかない。見つかれば一件落着なんだから。
とりあえず密岡さんの言う通り10を数えて目を開ける。
密岡さんもゆっくりと目を開け、俺を見て小さく頷いた。
どこを探したら良いのか、わけがわからないはずだったのに、足が自然と自分のロッカーに向かう。
―――ロッカーの中を見れば、失くしたと思っていた練習着。
「あ、ほんまにあった。」
―――次に何となくロッカールームにある椅子を引けば、
「タオルこんなとこにあったんや。」
どうやっても見つけられなかったのに、次々に失くしものが出てきた。
『残りはあと1つだね。』
密岡さんはそう言うけど、 俺が失くしたのは2つだけ。
これで隠れん坊は終わりじゃないのか？
「…あれ。こんなのあったっけ。」
ふとロッカールームの隅に視線を遣ると、床にボールが転がっているのが見えた。
そのボールは随分と古びたもので、こんなの練習でも使えないようなやつ。
誰かが片付け忘れたとかじゃなく、とっくに処分されていても良いような、古い古いボールだった。
『ほらね、ちゃんと見つかったでしょ?』
密岡さんはそっと俺の手を取り、古いボールを掴んだ。
『全部見つけられたから、鬼の勝ちだよ。』
『これは俺が預かるからね。山本くんはそろそろ帰らなきゃ。』
「え、あの、密岡さんは?」
『また明日、練習でね。』
密岡さんは少し眉を下げた笑みを向けると、俺の背中をそっと押した。
―――あの後 自宅へと戻って来てからも、密岡さんがあれからどうしたのか気になって仕方なかった。
でも、何となく、密岡さんに任せておけば大丈夫なんだろうなと思った。
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作者名：すずめ | 作成日時：2024年3月25日 17時
