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深夜、じくじくとした痛みで目が覚めた。
福也を起こさないように気を付けながら、そっと布団から抜け出す。
カーテンの隙間からはまだぼんやりとした月明かりが差し込んでいて、その薄明かりに手当された左手を翳した。
包帯の下の皮膚は、噛み跡を中心に火傷したような爛れが広がっている。
…福也に言ったらまた怒られるだろうが、正直、あの時の俺の行動は間違いじゃなかったと思っている。
だって、これは福也に向けられるはずだったものだから。
此方に向けているだけならまだ良かったものを。
大切な人へ向けようとしたのだから、それ相応の報いを受けることになったとしても、因果応報、自業自得だ。
ただの嫉妬ならば、まだ可愛気があったのだ。
何となくこのままでは眠れないような気がして、一度キッチンで水を飲み、落ち着きを取り戻そうとする。
再び音を立てないようにとそっと寝室へ戻れば、福也は穏やかな寝顔でぐっすりと眠っていた。
福也は、俺のために怒ってくれた。
自惚れかもしれないが、ここまで俺を大切に考えてくれていると思ったら、何だか嬉しかった。
それでも、こんなことが続けば、今度は悲しませてしまうだろうから。
―――そろそろケリを付けなければ。
福也の額に唇をそっと落とし、自分も再び夢の中へと落ちていった。
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作者名:すずめ | 作成日時:2024年3月25日 17時