藪をつついてはいけないよ ページ31
あれから福也のマンションへと一緒に帰って来たが、その道中はお互い一言も喋らず、無言のままだった。
福也が怒っている。…いや、これはきっと俺が怒らせたんだ。
でも、どうしてだろう?
俺が一方的にしつこくされていただけで、福也には何も害がなかったはずなのに。
マンションに着くと、福也は有無を言わせぬ雰囲気で俺をリビングのソファに座らせ、隣の部屋へ行ってしまった。
どのくらいそうしていただろうか。
ふいに足音が聞こえたので視線を送ると、福也が救急箱を持って立っていた。
「何ぼーっとしてんの。左手出して、早く」
やっぱり、明らかに怒っている。
おずおずと左手を差し出すと、福也はその手を取りながら口を開いた。
「…これ、何したの。さっきより広がってるように見えるけど、いつからなの。」
『ちょっと前に、…蛇に、噛まれた、…的な?』
「ふぅん。普通の蛇に噛まれただけでこんな風になるわけ?どーせあの女に何かあるんでしょ」
『!』
「いつもそうやって自分1人で解決しようとするんだ。さっきだって、あの女の手に俺が触れないようにしたから、こうなってるんじゃないの?」
『…、俺はほら、利き手じゃない方だし、耐性あるし、』
「っ、そういう問題じゃないだろ!」
『…っ、ぇ、あ、ごめ、』
「……Aはわかってないよ。俺がさ、どんな想いで今こうやって手当してるかわかる?…俺のせいでAが傷付いてるんだ。見てて、痛いよ」
『福也…』
「俺には視えない物が沢山あるけどさ、お前が困ってたり悩んでたりするのはちゃんと見えてるんだよ。隠されるのは嫌なの。わかる?」
『うん。ごめ、…あー……、福也、心配してくれてありがと』
「わかったら二度とこんなことしないでよ」
『う、ぁ、…善処する』
「そこは"わかった"って言えよ」
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作者名:すずめ | 作成日時:2024年3月25日 17時