隠れん坊 ページ4
(昔の話)(今よりずっと心の距離が遠かった頃のこと)
「…あれ？おかしいなぁ。朝ちゃんとこの辺に置いといたはずやねんけど」
なぁ、誰か俺のタオル知らん？と周りに聞いてみるけど、皆揃いも揃って知らないと言う。
「ついにロッカー汚すぎて、自分でも見つけられんくなったか」と誰かが茶化す。
失礼な。汚いんじゃなくて、物が多いだけやねん！
とりあえず予備のタオルを持っていたから良かったけど、本当にどこへ行ってしまったのか。
見つからないまま数日が経ち、今度は練習着がなくなった。
「練習着が1枚なくなっとる」
「お前、逆によく1枚なくなったことに気付いたな？」
「そーいち、うっさい」
「というわけで福さん、俺の練習着知りませんか。あとタオル」
「なんで由伸は俺のとこに来たわけ？」
「何となぁく、福さんかなーって」
「俺はそんな地味な悪戯しないよ」
「…そーっすよね」
すみませんと謝って踵を返した俺を福さんは呼び止め、密岡さんに相談したら良いと言ってきた。
「え"、密岡さんっすか？」
「そ。…もしかして、由伸はAのことが苦手？」
「いや、苦手っていうより、何ていうか掴みどころがないっていうか、」
いまいち何考えてるかわかんないんすよね、あの人。と付け加えた。
…おそらくその時の俺は、煮え切らない顔をしていたと思う。
そんな俺のことは気にする素振りもなく、意外とこういうの鋭いのはAだったりするからねと笑いかけた。
福さんにどういう意味かと尋ねても、ニコニコ笑って言葉通りの意味だよとしか言わなかった。
福さんを疑ってしまったような後ろめたさもあるし(だって普段悪戯してくるから)、とりあえずちゃんと探し出してスッキリしようと思う。
…けど。あの人、どこにおるんやろ。
いくら探せど肝心の密岡さんが見当たらない。こういうときどこを探せばいいのかも俺にはわからない。
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作者名：すずめ | 作成日時：2024年3月25日 17時
