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「A。今日は俺の家に泊まる約束だったでしょ？早くしないと置いてくよ」
『わ！ごめん』
「ミツくん、今日予定入ってたんだ？なーんだ、残念」
「…あぁ、もしかして貴女がAの高校時代のクラスメイト？はじめまして。」
「はじめまして！ミツくんとは同じクラスだったんで、職場も同じなんてすっごい偶然で嬉しくて！…山��さんはミツくんと"仲良し"なんですね。」
帰り道。
痺れを切らした福さんがミツさんの方へ向かって行くのが見えたから、どうなっているのだろうと興味本位でこっそり追いかけてみたけど…、
……うわぁ。
福さん、ミツさんの腰に手まで回して、めっちゃマウント取りに行っとるやん。怖。
相手の女も気付いた上であの笑顔とか、全然引く気ないし。
ミツさんはしれっと明後日の方向を向いとるけど、話題の中心はアンタやからな。
「それじゃ俺達は帰るんで、この辺で。お仕事頑張ってくださいね」
「ありがとうございます！山��さんも、これからよろしくお願いしますね」
鈴木さんが握手をしようと伸ばした手を、Aがスッと両手で包み、彼女の顔を覗き込む。
『じゃあ鈴木さん。そういうことだから、俺は帰るね』
俺の前では見せないような、ニコニコと音が付きそうな程の営業スマイル。
目の前の女はそれに気付かず、Aの笑顔に頬を赤く染めて見惚れていたが、しばらくすると満足そうに帰って行った。
『……さて。助かったよ、福也。じゃあ俺はこれで、』
「何言ってんの？今日は俺の家に泊まりって言っただろ？」
『え、あれマジで言ってたの』
「…ふぅん。……俺、結構苛ついてるからね。あんなに近付けさせて、危機感なさすぎじゃないの？それに、」
『！』
「…手までこんなことになって、また俺の知らないところで厄介事抱えてるし。とりあえず話は帰ってから聞くから。」
あの時、あの女が俺に握手を求めてきたところを、わざわざAは両手で掴んで阻止した。
そして今も、左手をポケットに入れて隠そうとしている。
感情のままに無理矢理Aの左手をポケットから引き出せば、まるで蛇にでも噛まれたような痕と、そこから広がる火傷のような爛れ。
……この馬鹿はいい加減、俺に誤魔化しは効かないことを理解してくれないだろうか。
(うわー…福さん、ミツさんのことお持ち帰りしとる)
(泰輔さん、その言い方はダメっす)
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作者名：すずめ | 作成日時：2024年3月25日 17時
