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「…今日のミツさん、いつも以上にぼーっとしてない？」ﾋｿﾋｿ
「着替える手も完全に止まってるし、天井の隅っこ見つめてるし」ﾋｿﾋｿ
「もしかして、あそこに何かいるとか!?」ﾋｿﾋｿ
「ちょ、やめろや！ミツさんだからって何でもホラー案件にしようとすんな！」ﾋｿﾋｿ
「おはざーす！……って、ミツさんどうしちゃったんすか？固まってますよー？」
『……んー…あ、泰輔、おはよう。…あぁ、着替えようとして…、悪いな、すぐ退けるから』
「……ほんまに大丈夫っすか？…あ、もしかして、あの女性のことで何かあったんすか？」
ぴくりとミツさんの手が一瞬動く。…図星か。
『はぁ……、蛇はどうも苦手だなぁ…』
「何か言いました？」
『んーん、こっちの話。』
別の日も、また別の日も、
「あ、密岡くん！」
「密岡くん、良かったらこれ、差し入れ！」
「密岡くんってミツって呼ばれてるんだ？私も呼んじゃおうかなー」
するり、するりと、隙を見ては近付いて来る。
「…ねぇ由伸、何なの、あれ。」
「最近入ってきたスタッフらしいんすけど、ミツさんの高校の同級生？みたいで、ずっとあんな感じっす」
「……ふぅん」
「(うわー、福さん顔めっちゃ怖い)」
最近、Aの周りに現れるようになった、鈴木とか言う女。
由伸から聞いたところによると、高校時代のクラスメイトだったようで、偶然 Aに再会したことから、何かにつけて言い寄っているらしい。
…見ていて全く面白くない。
AもAでハッキリ言わないから、この手の女は勘違いして諦めないんだ。
そして自分が困っているくせに、俺には何も言って来ない。全く面白くない。
胸の内にどす黒い感情がどんどん溜まってきて、思わず舌打ちしてしまいそうになる。
―――これ以上、様子を見ているだけなんて出来そうにない。
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作者名：すずめ | 作成日時：2024年3月25日 17時
