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試合後、シャワーを浴びて帰り支度をした俺は、皆と別れて駐車場へと歩いていた。
考えるのは、今後の対処について。
何となく直感で、今日はあまり誰かと一緒にいる所を見られない方が良いと思ったから、さっさと帰ろうと足を速めていた。
……ほら、やっぱり。
「密岡くん、お疲れさま！今日はもう帰り？」
『あぁ、鈴木さん。そっちも仕事終わりって感じだね。お疲れさま』
「…ねぇ！せっかくだし、今から一緒にご飯どう…かな？ほら、私も1人暮らしでしょ？知らない土地で寂しいし、高校時代の話とか久しぶりにしたいしさ！ね、どうかな？」
『有り難いお誘いだけど、遠慮しておくよ。誤解されたら鈴木さんも大変だろうし、俺なんかと行くより同僚の人と行った方が楽しいんじゃないか？』
「私は密岡くんがいいの！ねぇ、今日くらい良いじゃない？ちょっとだけ付き合ってよ」
明日も試合があるから帰らなきゃ、と断るために口を開こうとした時、鈴木さんがふいに俺の手を取った。
途端、ピリッとした痛みが指先から手の甲を駆け巡り、思わず反射的に手を引っ込める。
『あ、ごめん！俺、静電気なりやすい体質でさ、今もバチバチしちゃって』
「そうなんだ？ちょっとびっくりしちゃったけど、気にしてないよ」
「でも密岡くんも忙しくて疲れてるだろうし、ご飯はまた今度にしよっか。無理言ってごめんね？」
鈴木さんの後ろ姿を見送った後、小さく溜息をついた。
静電気なんてとっさに出た嘘。アレは明らかに強い念を感じた。
さっき握られた手をそっと見遣る。
まるで蛇に噛まれたような小さな痕が2つ、付いていた。
出来ることならば穏便に済ませかったのに。
……あぁ、これは厄介な事になりそうだ。
するり、するり、近付いて来ては、 ―――視ている。
邪魔者が近付かないように、確実に捕まえられるように、
じわり、じわり、纏わり付いて、
自分の物だと、噛み跡を付けて、着実に―――
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作者名：すずめ | 作成日時：2024年3月25日 17時
